目次
  1. 外部人材を増やす稟議を書いている方へ
  2. 同じ発表に「約7割」が2つあります
  3. 内訳は3段階でした
  4. 増やす理由の1位は不足ではありません
  5. 調査元の立場は発表に書かれています
  6. 「足りない」と「採れない」は別の問題です
  7. 借りられるのは方向で 幅は自分で測る

外部人材を増やす稟議を書いている方へ

「業界全体で7割が人材不足」という調査を根拠資料に添えて、外部委託やオフショアの比率を上げる提案を書いている方に向けています。

その方向が間違いだという記事ではありません。その資料が支えてくれる範囲は、見出しより狭いという話です。

同じ発表に「約7割」が2つあります

ITエンジニアの派遣・SES事業を展開する株式会社BREXA SOLVIAが、自社開発企業とSIerの採用担当者を対象にした調査結果を公開しています(2026年8月6日)。回答者は519人、調査期間は2026年7月7日から8日です。

見出しはこうです。「約7割の企業がITエンジニアの人材不足を実感」。

ところが同じ発表の本文には、別の数字が書かれています。

『大幅に不足している』『若干の不足がある』を合わせると、6割以上が人材不足を感じており

7割ではなく、6割以上。発表そのものの中で表現が揺れています。

内訳は3段階でした

該当する設問の回答は、次のとおりです。

回答 割合
ほぼ計画通り 35.5%
若干の不足がある 52.8%
大幅に不足している 11.8%

不足側を合計すると64.6%です。本文の「6割以上」はこの数字を指しています。

そして内訳を見ると、過半を占めるのは「若干の不足」で、「大幅に不足している」は11.8%でした

「約7割が人材不足」の中身 ほぼ計画通り 35.5% 若干の不足がある 52.8% 大幅 11.8% 見出しの「約7割」が指す範囲(合計64.6%) 同じ発表の本文は、この範囲を「6割以上」と書いている 「今すぐ人を足さないと回らない」に対応するのは、右端の11.8%
不足感の有無ではなく、どの段階の不足かで、必要になる打ち手が変わります。

「若干の不足がある」と「大幅に不足している」は、社内の実感としては地続きです。ただし打ち手は違います。前者は採用計画の精度や配属の調整で吸収できる幅ですが、後者は体制そのものを変えないと埋まりません。

増やす理由の1位は不足ではありません

この調査にはもう1つの「約7割」があります。今後3年間で外部人材の比率を「大幅に増やしていく」が27.2%、「やや増やしていく」が43.9%で、合計71.1%。こちらは見出しの表現と数字が合っています。

注目したいのは、その理由です。

理由 割合
案件やプロジェクト状況に合わせて柔軟に人員調整したいため 46.6%
AI代替を見据え、人員構成を最適化したいため 37.9%
最新技術や特定スキルをスピーディに調達したいため 35.0%

1位は「足りないから」ではなく、「後から人数を変えられるようにしたいから」です

これは調達の話ではなく、契約の話です。人が足りないなら採用すれば解決しますが、案件の増減に合わせて増やしたり減らしたりしたいなら、雇用ではない形が要ります。同じ「外部人材を増やす」でも、動機が違えば選ぶ相手も条件も変わります。

調査元の立場は発表に書かれています

この調査を実施したのは、ITエンジニアの派遣・SES事業を展開する会社です。発表の冒頭に自社の事業内容として明記されています。

隠されている情報ではないので、これ自体は問題ではありません。ただし外部人材の活用が増えるという結論が、調査元の事業と同じ方向を向いていることは、資料を引用する側が把握しておく事実です。

人材不足の調査を稟議に添えるときの4つの確認

  • 「不足」は何段階で聞いていますか。2択なら実感、3段階以上なら深刻度まで読めます

  • 見出しの数字は、本文のどの設問から来ていますか。合計の取り方で1割ずれることがあります

  • 調査元は、その結論の受益者ですか。事実として把握し、必要なら別の出典を足します

  • 回答者は誰ですか。採用担当者と現場責任者では、不足の見え方が違います

    体制変更や外部委託の稟議で、添付資料の点検リストとして使えます

「足りない」と「採れない」は別の問題です

不足を感じている企業が6割いても、その多くは採用活動そのものは動いています。問題は、募集しても応募が来ない、あるいは条件が合わないという状態です。

私たちが外部の体制を提案するとき、前提に置いているのは価格ではなく採用市場で取り合いになっている職種がある、という事実のほうです。安く上げる手段としてではなく、採れない期間を埋める手段として設計します。

この調査の理由1位が「柔軟な人員調整」だったのは、その意味で自然な結果でした。採れるか採れないかとは別に、採ったあとに減らせないことが制約になっているということです。

現場メモ

私たちが体制の相談を受けるとき、最初に聞くのは不足人数ではありません。「その人数は、いつまで必要ですか」です。

3年続く仕事なら採用のほうが安くなります。18か月なら外部の体制が合います。判断が分かれるのは金額ではなく期間で、この質問に答えられない状態のまま外部委託を決めると、契約更新のたびに同じ議論が起きます

不足の数字を持ってこられたときも、聞くことは変わりません。何人足りないかより、その仕事が何か月分あるかのほうが、設計に効きます。

借りられるのは方向で 幅は自分で測る

この調査から借りられるのは、「外部人材の比率を上げる方向へ動いている企業が多い」という事実と、その理由の内訳です。ここは519人分の実データがあります。

一方で、自社が今どの段階の不足にいるかは、この資料からは出てきません。11.8%の側にいるのか、52.8%の側にいるのかで、必要な打ち手は変わります。

人月で数える発注そのものが市場で値を下げられている状況では、外部人材の比率という指標だけを増やしても、何が解決するのかは決まりません。誰に何を任せるかを先に決める話は、ブリッジエンジニアに何を頼むかで書いたとおりです。

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