ブリッジエンジニアを立てるか迷っている方へ

オフショア開発の体制を検討していて、「ブリッジSEは付けたほうがいいのか」「単価に見合うのか」で止まっている方に向けて書いています。

先に立場を書きます。付けるかどうかより、何を頼むかを決めるほうが先です。ここが決まっていない状態で人を立てると、単価に関係なく成果が出ません。

そして何を頼むかは、受注側では決められません。

「必要なスキルが分からない」が半数を超えています

IPAが2025年に公表した「DX動向2025」に、痛いところを突く数字があります(IPA DX動向2025)。

DXの推進に必要なスキルを把握できているかを、日本・米国・ドイツの企業へ尋ねた結果です。

回答 日本 米国・ドイツ
必要なスキルと、人材の過不足まで把握している 14.9% 約半数
必要なスキルを把握できていない 57.1% 10%以下

半数を超える企業が、自分たちに何のスキルが要るのかを把握できていない。米独との差は誤差ではありません。

これはDX推進人材についての設問で、オフショア開発の調査ではありません。ただ、外部へ開発を出すときに起きることは、この延長線上にあると私は読んでいます。必要なスキルを言語化できていない発注側が人を探すと、「何を頼むか」を決める仕事まで相手に渡ることになります

その受け皿になるのが、たいていブリッジエンジニアです。

通訳を探すと、通訳しか来ません

役割定義を「日本語とベトナム語ができて、進捗を報告してくれる人」と書けば、そのとおりの人が来ます。

そして、要件の穴は誰も埋めません。埋める役割が定義に書かれていないからです。

AIが実装へ入ると、仕事は前工程へ寄ります

ここ1年で変わったのは、実装の速度と量です。

コード生成が現場に入ると、仕様が曖昧なままでも動くものが出てきます。以前なら「これでは作れません」と実装で止まっていたものが、止まらずに通過するようになりました。曖昧さが検知される場所が、実装から受入テストへ後ろ倒しになったということです。

後ろ倒しになると、手戻りは高くつきます。作ってから直すからです。

だからブリッジ役に必要な能力の重心が、翻訳と進捗管理から、前工程へ移ります。具体的には、要件の欠けを見つけて発注側へ質問を返す力、受入基準を先に文章にする力、AIが出した実装を仕様と突き合わせる力です。

言語能力が要らなくなるわけではありません。ただ、言語だけができる人に払う金額としては、この1年で明らかに合わなくなりました。

職務記述に何を書くか

人を探す前に、頼む内容を1枚にします。

ブリッジ役の職務記述に書く5項目

  • 要件の欠けを誰に返すか: 曖昧な指示を受けたとき、質問を返す先の担当者名と、返答期限
  • 受入基準を書く責任の所在: 「完成」の定義を書くのは発注側か、ブリッジ役か。共同なら誰が最終承認するか
  • AI生成物の扱い: 生成コードのレビュー範囲と、レビュー記録を残す形式
  • 判断してよい範囲: 仕様の解釈をその場で決めてよい範囲と、必ず持ち帰る範囲の線引き
  • 記録の成果物: 議事録・決定事項・変更履歴のうち、納品物に含めるもの

体制の検討会議にそのまま持ち込めます。5項目とも「誰が」を空欄にせず埋まったら、人を探す段階へ進めます

1つ目で詰まる会社が多いはずです。質問を返す先が決まっていないと、ブリッジ役は聞くのをやめて推測で進めます。それが手戻りの最大の原因です。

現場メモ

私たちが体制を提案するとき、最初に確認するのは日本側で質問を受ける人の名前と、その人が返事できる頻度です。役職ではなく、実際に返せるかを聞きます。

週1回の定例でしか返答できない体制だと分かった案件では、ブリッジ役を増やす提案はしませんでした。増やしても、質問の待ち行列が長くなるだけだからです。代わりに、決めなくても進められるところまで作って見せる進め方へ変えました。

この確認をすると、たいてい商談は長引きます。すぐ人を出してほしい発注側からすると、余計な質問に見えるはずです。それでも聞くのは、返答できない体制のまま人を増やした案件が、こちらの持ち出しで終わることを繰り返したからです。

単価表より先に、頼む内容を1枚にする

ブリッジエンジニアが要るかどうかは、単価の問題ではありません。要件の曖昧さを誰がどこで止めるかを決めたかどうかの問題です。

決めていれば、その役割に必要な能力が書けます。書ければ、単価が高いか安いかも判断できます。決めないまま単価表を比べても、比べる基準がありません。

日本側PMの側から同じ問題を扱った記事がAI時代のオフショア開発で日本側PMが担う役割です。役割の重心がどう動くかは重なるので、体制を設計する段階では両方を見てください。

現地の人材市場の前提はベトナムのIT給与は国内で2番目に高い水準です、AI活用を体制へ落とす進め方はAIネイティブ開発で扱っています。

職務記述の1枚目から一緒に作りたい場合は、お問い合わせからご相談ください。