目次
  1. 「うちも全社でAIを使っています」と言う前に
  2. 97.8%と71.4%は、別の数字です
  3. 1四半期で28.4ポイント動きました
  4. 跳ねた理由は、研修ではありません
  5. 53.9時間が何に使われたかは、書かれていません
  6. 3年続けているから、差が読める
  7. この数字は5か月前のものです
  8. 自社で測るときに決めること
  9. 数える前に、数え方を決めてください

「うちも全社でAIを使っています」と言う前に

社内の生成AI活用がどこまで進んだかを測ろうとしている方、あるいは他社の活用率を見て自社と比べている方に向けて書いています。

先に言っておきます。活用率は1つの数字では足りません。

97.8%と71.4%は、別の数字です

GMOインターネットグループが四半期ごとに続けている定点調査の結果が公開されています(GMOインターネットグループ 2026年4月9日)。調査期間は2026年3月9日〜13日、有効回答は5,353人です。

グループ全体の生成AI業務活用率は97.8%。ほぼ全パートナーが業務で使う段階に到達した、と書かれています。

一方、同じ調査でのAIエージェントの業務活用率は71.4%でした

同じ調査で、2つ数えている 生成AIを業務で使っている 97.8% AIエージェントを業務で使っている 71.4% 差の26.4ポイントは、道具としては使っているが、任せる段階には入っていない層
1つの活用率だけを見ると、この段差が見えません。全社導入の進み具合は、2つ数えてはじめて位置が分かります。

道具として使うことと、手順を任せることは違います。前者はほぼ全員が越えていて、後者は3割が越えていない。

1四半期で28.4ポイント動きました

この71.4%という数字は、前回調査では43%でした。1四半期で28.4ポイント上がっています。

同じ期間に、1人あたりの月間業務削減時間は46.9時間から53.9時間へ7.0時間増えました。グループ全体では月あたり約35.2万時間、同社の試算で約2,203人分の労働力に相当するとされています。

利用の深さを示す数字も並んでいます。業務に活用しているパートナーのうち83.7%が「ほぼ毎日活用」、複数AIサービスの利用率は91.5%、有料サービス契約率は82.0%です。

跳ねた理由は、研修ではありません

ここが読みどころです。

急伸の理由として同社が挙げているのは、AIエージェントを実務で試す環境の整備でした。研修プログラムを増やしたから、ではありません。

これは自社の推進計画をつくるときに効きます。使える人を増やす施策と、試せる場所を作る施策では、動く数字が違う。前者は「知っている人」を増やし、後者は「使った人」を増やします。

53.9時間が何に使われたかは、書かれていません

正直に書いておきます。

削減・捻出された53.9時間が、その後どこへ行ったかは公開されていません。別の業務に充てられたのか、残業が減ったのか、新しい仕事が生まれたのか。ここは測られていない、あるいは公開されていない部分です。

削減時間を人数へ換算する発表は増えましたが、捻出した時間の行き先まで測っている例は多くありません。自社で同じ調査をするなら、削減時間と一緒にこの1問を入れる価値があります。

3年続けているから、差が読める

この調査の本当の価値は、単発の数字ではなく続いていることのほうです。

同社は2023年11月から、四半期ごとに同じ設問で調査を回しています。だから「前回比+28.4ポイント」「+7.0時間」という差が読める。1回だけ測った97.8%には、この情報がありません。

社内の活用率を測るなら、最初の1回より2回目のほうが価値があります。設問を固定して、同じ母集団に、同じ間隔で聞く。この3つを最初に決めておかないと、次回に比べられません。

この数字は5か月前のものです

最後に日付の話をします。

この発表は2026年4月9日、調査の実施は3月9日〜13日です。8月現在で流通している「AIエージェント活用率71%超」という話題は、5か月前の数字を指しています。

数字そのものは正しく、出典もはっきりしています。ただし5か月あれば次の四半期調査が2回入る期間です。他社の数字を自社の計画へ写すときは、いつ測ったものかを必ず見てください。

現場メモ

私たちがお客さまの社内活用率を聞くと、たいてい1つの数字が返ってきます。「8割が使っています」のような形です。

そこで「その8割は何をした人ですか」と聞くと、答えが分かれます。一度でも触った人か、今月使った人か、業務の手順に組み込んだ人か。同じ会社の中でも、部署によって数え方が違うこともあります。

私たちが提案で数字を出すときは、数え方の定義を先に書きます。定義を書くと数字は小さくなりますが、次に測ったときに比べられます。比べられない数字は、方針を変える根拠になりません。

自社で測るときに決めること

社内のAI活用率を測る前に決める4つのこと

  • 何を「活用」と数えますか。一度触ったか、今月使ったか、業務手順に組み込んだか

  • 道具として使うことと、任せることを分けて数えますか。1つの数字にまとめると段差が消えます

  • どの間隔で測りますか。次回と比べるには、設問と母集団を固定する必要があります

  • 捻出した時間の行き先も聞きますか。削減時間だけでは、成果として説明しにくくなります

    社内のAI推進計画、経営会議への報告資料の設計にそのまま転記して使えます

数える前に、数え方を決めてください

国内企業全体では、生成AIを使う企業が86.4%に達する一方で、組織として何も決めていない企業が27%あります。この差については以前まとめました。今回のGMOの数字は1社の社内調査なので母集団が違いますが、使っているかどうかだけでは足りないという点は同じです。

エージェントをどこから入れるかの路線については現場で300件量産するか、基幹業務へ1本組み込むかで扱いました。71.4%という数字の中身も、この2つが混ざっています。

自社の活用状況をどう測り、どこから広げるかを整理する段階でしたら、お問い合わせからご相談ください。数え方の定義づくりからご一緒します。


出典

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