目次
ロボットや自動化設備の投資を検討している方へ
工場や倉庫へロボット・自動化設備を入れる検討をしていて、投資判断の材料を集めている方に向けて書いています。
導入できるかの話ではありません。入れた後に何が増えるかの話です。
自動化した工場で増えているのは、保全の仕事です
八千代ソリューションズが製造業・鉄鋼業の後工程(保全、生産技術、組立/加工、品質)従事者500名に調査した結果が公開されています(調査リリース 2026年6月25日。調査期間は2026年5月15日〜20日、ネオマーケティング委託)。
スマートファクトリー化が進展している職場は36.8%、検討・計画段階を含めると43.2%でした。
そのうえで、自動化・高度化が「工場全体で進展している」と答えた企業では、72.5%が保全業務の負荷(業務量・難易度・複雑さ)の増加を実感しています。「一部工程・ラインで進展している」企業でも63.5%です。
自動化は人の作業を減らすはずでした。減った分がそのまま消えるのではなく、別の場所へ移っています。
人は増えていません
同じ調査の、対になる数字です。
自動化が進展している企業のうち、85.3%が保全人員を拡充していません。さらに21.2%は「業務量は増加しているが体制は据え置き」または「業務量が増加したのに人員が減少」と答えています。
今後さらに設備が高度化した場合の保全体制について、自動化を進める企業の約7割が不安を感じているとされています。
増えた仕事の1位は、データの収集です
ここが本題です。増加・複雑化していると感じる保全業務の中身が公開されています。
| 増えた保全業務 | 割合 |
|---|---|
| データ収集・記録・分析作業の増加 | 23.2% |
| 点検項目・チェック対象の増加 | 19.8% |
| 新しい設備に対応するための教育・スキル習得 | 18.8% |
1位が修理でも故障対応でもなく、データの収集と記録である点を見てください。
自動化設備を入れると、センサーが増え、稼働ログが増え、点検すべき項目が増えます。そのデータを誰かが集めて、記録して、読む必要が出てくる。この作業は設備のカタログには載りません。
私たちがフィジカルAIの領域で扱っているのも、この2列目のほうです。ロボット本体ではなく、その手前と後ろにあるシステムです。
撤去される理由の83%は、技術ではありません
別の調査も見ておきます。ロボット導入支援を手がける RobotMateHub が、現場インタビューをもとに公開した数字です(登壇レポート 2026年7月1日)。
導入済みロボットが撤去される理由のうち、83%が技術以外の要因でした。
- 運用負荷が高すぎる 37%
- スタッフが操作できなかった 23%
- 環境が想定と違った 23%
- 故障・エラー(技術的要因) 17%
ただしこの調査は n=30 です。八千代の500名調査とは精度が違うので、傾向を補強する材料として読んでください。同社が「製造業がロボットを導入できない理由」を尋ねた際に73%が「ロボットを操作できる人がいない」と答えた、という数字も同じ扱いになります。
それでも方向は一致しています。止まる原因は機械の側になく、機械を回す側にある。
AIの費用と、同じ構造をしています
この連載でAIの費用は作る費用ではなく動かし続ける費用で決まると書きました。今回の調査は、その物理版です。
そして8月に書いた犬型ロボットが読んでいるのはプレス機のメーターですの帰結でもあります。あの記事では「読んだ値の行き先を先に決めてください」と書きました。決めずに入れると、行き先のない記録を人が集め続ける仕事が増えます。増えた保全業務の1位がデータ収集だという今回の数字は、それが実際に起きていることを示しています。
投資を判断する前に確認すること
自動化設備の投資判断で確かめる4つの質問
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増える点検項目は何件ですか。設備が増えた分、日常点検の対象がどれだけ増えるか
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その記録は誰が見ますか。集めたデータの行き先と、読む担当が決まっていますか
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一次対応は誰がしますか。異常時にメーカーを呼ぶまでの間、現場で何ができますか
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保全の人員計画は変わりますか。変わらないなら、増えた工数は誰の時間から出ますか
設備投資の稟議資料、SIer比較の評価シートにそのまま転記して使えます
稼働率は、買った時点では決まりません
八千代ソリューションズの代表は、設備投資は導入した時点で価値を生むのではなく、安定して稼働し続けて初めて成果につながる、と述べています。
当たり前に聞こえますが、見積書はこの当たり前の形になっていないことが多いです。1列目だけで比較して、2列目は稟議の後に現場が引き受ける。
導入率そのものについては倉庫は8割 建設は3割で扱いました。数字が伸びている領域と止まっている領域の差も、たいていこの2列目の有無で説明がつきます。
現場のデータをどこへ集め、誰が読む形にするかを設計する段階でしたら、お問い合わせからご相談ください。既存の生産管理や保全の仕組みとのつなぎ方からご一緒します。
出典
- 【調査リリース】製造工場の自動化が進むほど保全業務の負荷が高まる傾向(八千代ソリューションズ、2026年6月25日。調査期間2026年5月15日〜20日、回答者500名、調査委託先ネオマーケティング)
- 【登壇レポート】関西ロボットワールド2026 ― ロボット導入が現場で止まる本当の理由(RobotMateHub、2026年7月1日。現場インタビューと調査、n=30)
