ロボットの調達計画を持っている方へ
倉庫や工場でロボットの導入・更新を計画していて、「中国製ロボットが禁輸になった」という報道を見た方に向けて書いています。
先に結論を言います。**この規制を「中国製かどうか」で理解すると、自社の対象範囲を読み違えます。**条文が見ているのは製造地であって、メーカーの国籍ではありません。そして対象は、ヒューマノイドや四足歩行に限りません。
何が起きたのか
米連邦通信委員会(FCC)の公共安全・国土安全保障局が2026年7月28日、2つのカテゴリーをCovered Listへ追加しました(Public Notice DA 26-786)。海外製の電力インバーターと、海外製の先端ロボットデバイスです。前日に政府横断の機関が出した安全保障上の判定を受けた措置になります。
Covered Listに載った機器は、FCCの機器認証を受けられません。認証がなければ米国での輸入・販売・マーケティングができないため、実質的に新規モデルが締め出されます。
ロイターの報道をはじめ各社が「中国製ロボットの禁輸」として伝えました。中国勢が世界のヒューマノイド市場の大半を占めるため、実際の影響が中国メーカーに集中するのは確かです。ただ、条文はそう書かれていません。
基準はメーカーの国籍ではありません
条文が使う「海外製(foreign-produced)」は、連邦調達規則のBuy American基準で「国内製品」に当たらないものという定義です(48 CFR § 25.101(a))。
この定義の帰結を、法律事務所Morgan Lewisの解説が整理しています。
- メーカーの国籍は決め手にならない。米国企業が国外で作った製品も「海外製」になりうる
- 米国での最終組立だけでは足りない場合がある
- 通関の原産地判定とは必ずしも一致しない
**つまり、対象は中国メーカーに限定されていません。**Covered Listはこれまで特定企業を名指しする形が中心でしたが、ドローン、家庭用ルーターに続いて今回も、製造地と製造事情で製品カテゴリーごと規制する方式が採られています。
対象はヒューマノイドに限りません
実務で一番効くのはここです。「先端ロボットデバイス」の定義は、次のすべてを満たすものです。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 移動 | 地上を移動・障害物回避・ナビゲーションができる |
| 操作 | 人から離れた場所で、指令かセンサーデータで動く |
| 重量 | 本体とドック・地上局の合計が4.4ポンド(約2キロ)超 |
| センサー | 環境を知覚するセンサーを持つ |
| 通信 | 有線・無線の接続を持ち、いずれかの方向で200kbps以上 |
| ソフト | 自律移動・知覚・データ収集・遠隔指令を制御するソフト。遠隔で動くものやAIモデルの重みを含む |
Morgan Lewisは「定義はヒューマノイドや四足歩行を超えて及びうる」と明記しています。仕様次第で、物流・警備・点検・製造・商業サービス、さらには掃除ロボットや芝刈りロボットまで入る可能性があります。クラウド側で知覚や制御をしていても、それだけでは外れません。
一方で、明示的に除外されているものがあります。
- コネクテッドビークル(車両総重量を問わない)
- 鉄道上でのみ動く車両
- 無人航空機
- 無人潜水機
- 医療・外科ロボット、義肢、指定された移動補助機器
- 固定・据置型の産業用ロボット(多関節、パラレル・デルタ、直交・ガントリー、スカラ)
**据え付けのアームは外れ、動き回るものは入る。**倉庫のAMRやAGV、点検ロボットを持っている会社は、この線のどちら側かを製品ごとに見る必要があります。
止まるのは新規モデルだけです
範囲を正確に押さえておきます。FCCのファクトシートによれば、規制されるのはまだ認証を受けていない新規モデルです。
すでに認証を通ったモデルは、引き続き輸入・販売・使用ができます。消費者が購入済みの機器にも遡りません。連邦政府の調達・利用も対象外とされています。あわせてFCCの技術局は、7月28日より前に認証されたモデルについて、脆弱性修正やOS互換性の更新など一定のソフト・ファームウェア更新を少なくとも2029年1月1日まで認める限定的な免除を出しました。
ただし、Morgan Lewisは注意点を付けています。7月28日より前に開発・製造・在庫化されていても、その時点で認証を取っていなかった製品は、既存モデル扱いになるとは限りません。確認はモデル単位・FCC ID単位で行う必要があります。
条件付き承認の申請窓口も開きました。先端ロボットについては国防関連省庁が判断し、申請期限は2028年1月1日。ただし所有構造、部品表、サプライチェーンの集中度、米国内製造の時限計画まで求められる重い手続きで、審査期間の定めはありません。
日本の発注側に効くのはどこか
これは米国の規制です。日本の輸入や使用を止めるものではありません。
それでも調達計画に効きます。**ロボットは世界市場で作られ、世界市場で売られているからです。**米国市場を持つメーカーは、認証が通る構成へ製品を作り替えるか、米国向けを切り離すかの判断を迫られます。どちらでも、部品構成・生産地・価格・リードタイムが動きます。
もう1つは、この方式が広がるかどうかです。FCCはドローン、家庭用ルーター、電力インバーター、先端ロボットと、同じ「カテゴリー単位で製造地を見る」やり方を重ねてきました。センサーと通信と遠隔制御を持つ機器は、どれも同じ論法の射程に入ります。
ロボット調達で確認する5点
- 自社の機器は定義のどちら側ですか: 移動するか、重量2キロ超か、通信200kbps以上か、環境センサーを持つか。据置型の産業用アームは除外ですが、AMR・AGV・点検ロボットは条件を満たしえます
- 認証はいつ取得したモデルですか: モデル単位・FCC ID単位で確認します。「7月28日より前から売っていた」は根拠になりません
- ベンダーの米国向け計画はどうなりますか: 米国市場を持つメーカーなら、製品構成の見直しか市場の切り離しが起きます。次期モデルの供給時期と仕様を確認します
- 部品の生産地はどこですか: 完成品メーカーの国籍ではなく、部品の原産と製造地が判定要素です。単一調達先と代替の有無まで聞きます
- 契約に何が書いてありますか: 認証状態、原産地、供給停止時の扱い、代替品の提供義務。長期の保守契約ほど、ここが効きます
設備投資の稟議や、ロボットベンダーとの商談・契約レビューにそのまま転記して使えます
何を確認しておくか
いま日本で使っているロボットが止まるわけではありません。慌てて入れ替える話でもありません。
確認しておくべきなのは、次に買うときの選択肢がどう変わるかです。手元の機器がどちらの側にあるのか、ベンダーの次期モデルはいつ何が出るのか、契約に供給停止時の取り決めがあるのか。この3つは、規制の行方に関係なく調べておいて損がありません。
そして機種が入れ替わっても業務が止まらないかどうかは、ロボット本体ではなく、その手前と後ろのシステムで決まります。実績データの書き戻し先、異常時の通知先、既存システムとの接続。ここが機種に依存しない形になっていれば、供給網が動いても現場は続きます。
自社の設備と業務システムの接続を、機種の入れ替えに耐える形へ整理したい段階でしたら、お問い合わせからご相談ください。本体の選定ではなく、つなぎ目の設計から入ります。
