二大エージェント基盤で技術選定中の方へ

自社の製品や社内システムにエージェントを組み込むことが決まり、OpenAIのCodexとAnthropicのClaude Codeのどちらを土台にするか検討している方に向けて書いています。

先に構図を言います。思想は正反対、機能はほぼ同等、深層の構造は同じです。この3行を押さえると、比較記事の主張がどの層の話をしているのか読み分けられるようになります。

思想の違い: 開くプロトコルか 拡張ポイントか

OpenAIは2026年8月19日、Codexのハーネス(実行基盤)を製品に組み込める部品として位置づけました。方式は「開くこと」です。ハーネス本体はApache-2.0で公開され、外部アプリとの接続はapp-serverという文書化されたプロトコルで行います。中身はJSON-RPC 2.0で、接続方式は標準入出力が既定。プロトコルの型定義をコマンド1つで自動生成できるため、JSONを読み書きできる言語なら何からでも話せます。

Anthropicは逆です。Claude Codeのハーネス本体は公開されていません。組み込みはAgent SDKというライブラリ経由で、公式対応はTypeScriptとPythonの2言語。カスタマイズはフック・承認コールバック・サブエージェント・スキルといった、SDKが用意した拡張ポイントの範囲で行います。

観点 Codex(app-server) Claude Code(Agent SDK)
ハーネス本体 オープンソース(Apache-2.0) 非公開
接続の形 文書化されたプロトコル ライブラリのAPI
対応言語 プロトコルを話せれば任意 TypeScript / Python(公式)
カスタマイズ 実装自体を読める・改造できる 用意された拡張ポイントの範囲

機能の対応はほぼ1対1です

思想が違っても、組み込みに必要な機能は両方に揃っています。

組み込みで必要なこと Codex app-server Claude Agent SDK
会話の開始・再開 スレッドの開始・再開・分岐 セッションIDで再開・分岐
実行の進捗を受け取る ターンごとのイベント通知 メッセージの非同期ストリーム
危ない操作の前に人間へ確認 承認リクエストへの応答 承認コールバック
外部ツールの接続 MCP MCP+アプリ内定義のカスタムツール
実行範囲の制限 サンドボックス設定 許可モードと許可ルール
途中で止める ターンの中断 割り込みAPI

前回の記事で書いた「アプリが文脈と承認を持ち、ハーネスがループを担う」分業は、どちらを選んでも同じように組めます。機能の有無で決着はつきません。

深層は同型です: 子プロセスとstdioのJSON

「プロトコル方式 対 ライブラリ方式」という対比は、実装レベルでは正確ではありません。

Claude Agent SDKは、内部にバンドルされたCLIを子プロセスとして起動し、標準入出力でJSONを流して通信するライブラリです。CodexのSDKも同じで、app-serverを子プロセスとして起動してJSON-RPCを話します。つまりどちらも実体は「CLIをspawnしてstdioでJSONを流す」構造で、違いはその配管を自分で書くか、SDKに書いてもらうかだけです。

この同型性は、共通の制約も生みます。どちらもWeb APIを呼ぶだけでは動きません。エージェントのプロセスを自社の実行環境に同居させる必要があり、コンテナへのCLI同梱・プロセスの死活監視・ファイルシステムの隔離設計は、どちらを選んでも自前の仕事です。

同型であることの傍証もあります。DeepSeekが2026年8月に公開したハーネスは、CodexとClaude Codeの両方をサブエージェントとして呼ぶプラグインを同梱しており、第三者が両者を同じ形の部品として扱えています。片方がプロトコル、片方がSDKという表面の違いは、抽象化の一段下で消える程度のものだということです。

選定基準は4つに絞れます

CodexとClaude Codeの選定4基準

  • 組み込み側の言語: TypeScript/Pythonで書けるならどちらでも。それ以外の言語が主体なら、プロトコルを直接話せるCodexが素直です
  • 既製の統制機構をどれだけ使いたいか: 権限の多層制御・サブエージェント・スキルといった仕組みを組み込み済みで使うならClaude Agent SDK。同等品を自作する覚悟があるかで判断します
  • ハーネス内部に手を入れる必要があるか: 実行ループ自体の改造や監査が要件なら、本体が読めるCodex一択です
  • どちらでも変わらない部分を見積もりに入れたか: プロセス監視・コンテナ設計・サンドボックス・モデルの従量費用は共通の自前領域です。ここを忘れた見積もりは後で崩れます

技術選定会議の論点整理と、開発会社の提案比較にそのまま使えます

現場メモ

この比較は、両社の公式ドキュメントとリポジトリを同じ日に突き合わせて書きました。作業時間は半日です。世に出回る比較表には、対応言語や承認の仕組みが実際と食い違うものが少なくありませんでした。二大選択肢の比較くらいは、外部の記事に頼らず一次情報の突き合わせで自社検証する。半日で済む作業が、その後の数か月の手戻りを防ぎます。

発注側にとっての意味

「どちらが優れているか」という問いは、この2つに関しては筋が悪いです。機能はほぼ同等で、深層は同じ構造だからです。効く問いは「自社の言語と体制で、どちらの配管が安く安全に維持できるか」です。

ハーネスという層の基礎はエージェントの本体はハーネスですに、実行基盤の費用とロックインの見方はハーネスのコモディティ化に書きました。自社の技術選定を一次情報ベースで整理したい場合は、お問い合わせからご相談ください。選定表を一緒に埋めるところからで構いません。